ネパール紀行

ネパールへ

何故にネパール?・・・南アジアの締めくくりの旅

旅の日程

south_asia.jpgwikipedia による 今回はネパールへの旅。
 南アジアとは、日本語版wikipediaによれば、最大規模で書いて「インド/スリランカ/ネパール/パキスタン/バングラデシュ/ブータン/モルディブ/アフガニスタン/イラン/イギリス領インド洋地域/チベット」を指すらしい。若い人たちがビーチ中心に訪れるモルディブと現実にはそうそうは行けそうもないアフガニスタンなどを除けば、もはや訪れていない主要国家はネパールだけとなった。より正確に言えば、インドから一日だけ国境越えをしてルンビニを訪れているので、ネパールを訪れたことが無いというのは不正確であり、私たちの訪問国数もネパールに行ってもその数は増えなかったわけだが、しかしながらルンビニだけを見てネパールを見たとは言いがたい。現在のネパールはインドと同様にヒンズー教徒が多数を占める国であるが、以前の少ない経験からしても、インドとは少し違っている気がした。そのネパールを訪れることにした。
 旅の日程として2月を選んだのは、天候上に理由から。ネパールでは雨期が6月頃から始まる。それ以前5月頃からは気温の問題などもあり観光という意味では適さない時期になるという。高山を眺めるという点では、概ね日本の晩秋から冬の時期が晴天率が高く観光適期となっているので、その時期を選んだ。それはサガルマータ(英名エベレスト・中国名チョモランマ)を見るためのフライトをより確実にする狙いも含んでいた。
 実際に旅してみて、雲が多い日もあったが、傘を差したのは、合計でも滞在中ほんの数時間という所だった。移動中にもフロントガラスがぬれることもあったが、まずまずこの時期を選択して正解であったと思われる。

ネパールの困ったまか不思議さ

Flag_of_Nepal.pngwikipedia による ネパール国旗は世界にも類を見ない形式の国旗。ネパールに行って初めてネパール国旗が何故にあのような形なのかを理解した。世界という尺度では唯一の矩形で無い旗として知られるネパール国旗だが、寺院などでは似たような形を多く目にした。詳細な国旗の意味についてはwikipediaに譲りたいが、この特徴的な形故に多くの人が知っている国旗だ。おそらく首都の認知度と同じくらいにはあるだろう。
 国旗の不思議な形は旅行者を悩ませると言うことは無いが、この国の時差については悩まされる。ハーフ・アワーの単位で多くの国が時差を設定している。しかしながらこの国の時差は日本と-3時間15分。クオーター・アワーの単位で違うのだ。最近のウインドースは時計表示をメイン以外に二つ設定できるが、この機能を利用して世界の時差を眺めてみると、クオーター単位で時差が表示されるのはカトマンズ(ネパール首都)だけだ。ただ、世界的に見るとオーストラリアとニュージーランドにそうした例があるらしく、国旗と違い世界唯一というわけでは無い。訳では無いが、これは旅行者を悩ませる。我々はともにカシオ製の腕時計を使っているが、この時計にはネパール標準時の設定が無い。
 ということで旅行社に聞いたのだが、手立ては無いというつれない返事(今から考えればこの時点でこの旅行社の「ネパール力」も推定できたのかも知れない)。1/4という単位が貨幣にもある国なら普段から慣れ日田死んでいる単位なので計算がしやすいのかも知れないが、我々日本人はそうなれていない。英語の時間にクオーター・パースト10とか、クオーター・ツー4という表現に戸惑いを感じた日本人は多いはずではないのか。
 私たちは考えた。考えて考えた結果こうした。それは百均で腕時計を買うことだった。そこに売られているのは電子時計だが時刻設定は電子式で無いので、どのような時間も設定可能だった(アナログだった)。
 こうして解決したが、他国に経済依存(特にインド)しているこの国が、このような独立した時差設定をしているのが、尊大さを表しているとも言えるが、まか不思議というしかかない。経済一辺倒にするのは日本人の悪いところかも知れないが、サモア独立国が米国依存型経済からアジア依存型に体質が変わってきたので、この正月に時差を変更したくらいだから、時差換算の容易さは国際的に見ても重要な経済ファクターだと思うのだけれども。

旅の中味・・・宗教と自然

nepal1206 16 11-53.jpgサイの放尿 訪れた目的は勿論世界遺産見物が含まれる。ネパールは自然遺産と文化遺産を二つずつ持つ国(2012年2月現在)。文化遺産は①カトマンズの渓谷(1979年、文化遺産)と②釈迦生誕地ルンビニ(1997年、文化遺産)、自然遺産は③サガルマータ国立公園(1979年、自然遺産)と④チトワン国立公園(1984年、自然遺産)。ちなみに複合遺産の指定を受けているものは無い。
 さてネパールの自然だが、旅行会社を訪れたときに言われたことだが、「ネパール=寒い国」という印象は全くの間違いだ。緯度的に言えば、鹿児島の本土部分の北端から那覇くらいの緯度に位置している。標高は勿論最高地点は、サガルマータで8850メートルだが、最低所は資料によりまちまちだがwikipediaによれば標高70メートルとのことだ。概ね8800メートルの高度差が僅か2-300㎞の間にあることになる。つまり、標高の低い南部の辺りは、沖縄と同じ風景が広がっていて不思議はないと言うことになる。山国の印象が強く(この印象自体は間違ってはいない)、それ故に極寒の地域ではないかという印象を多くが持つ。ちなみに首都のカトマンズは1400メートル辺りであり、ボリビアの首都ラバスの半分にも達しない。我々が訪れた2月中旬は、もちろん彼の地の人々にとってはまだまだ寒いのだろろうが、特にポカラ近辺では我々にとってはかなり暑い気温になっていた(西洋人は裸になる若者も)。
 エベレストのベースキャンプには行けないこともないらしいが(実際かつてある旅で一緒になった御仁で、中国を旅したときに障害者の人をそこまで連れて行ったことがあるという経験を持つ人がいた。)、往復2週間は最低でもかかるらしく、そのハードルは我々の旅の基準を外れていた。したがって今回はサガルマータ国立公園は、マウンテンフライトと地元では呼ばれているエベレスト見物の飛行機で見学して済ますことにした(インチキとのそしりは甘受したい)。2時間ほど待たされたが、そのフライトは期待に応えるものだった。コックピットから機長に教えてもらったサガルマータは、控えめに山々の間から頂を出していた。
 チトワンでのアクティビティーはいくつかあったが、最後に待ち受けていたのは、朝の時間帯のバードウォッチングで偶然にもたらされた、サイとの至近距離(20メートルくらい)での遭遇がトップを飾るだろう。目線で見たそれは、恐怖と興味が入り交じったものだった。ちなみにチトワンは、標高が100メートル前後。
 ネパールはかつてはヒンドゥー教を国教にしていたが、現在はその規定は外されているとのことだ。しかしながら国民の多数はヒンディー(8割)であり、仏教徒は僅かに1割前後となっている(Wikipedia)。しかしながら、この国ではヒンズー教の寺院に仏教の観音がいたり、仏教寺院にガネーシャがいたりで、両者を「明確には」線引きすることは出来ない感じだ。
 人々は祈りの中で生活を多くは送っている。勿論熱心で無い人もいるだろうが、老若男女を問わず、道ばたにある「その人が神と信じるもの」には手をかざす。
 今回シバが生まれたとされる月の新月の日に行われるシヴァラートリーという祭の見物を一つの目的としていった。残念なことに日本側にたいした知識が無かったのと、それ故もあるが現地ガイドには我々の意図が伝わらなかったが(あんなもの外の宗教の人が見たとて仕方が無いというのが彼の意見)、それでも我々は堪能した。かつての古都の一つとされるカトマンズ盆地のバクタプルで、深夜に及ぶまで熱心に寺院に詣でる人々、そしてそれを浮かび上がらせるたき火の炎が印象的だった。

それでも不満の残る旅

nepal3596 21 12-24.jpg庇を蓮に支えるなど特徴的な建物 今回旅行に利用したのは、K旅行社。私たちの住んでいる町に本社がある。そして、ネパールを発祥の地ともしている。ネパールに系列会社を持ち、専門性の高い旅行社と思っていた。同じ南アジアにあるブータンを旅行した際の、フラストレーションを起こさないためにも、より専門性の高い旅行社を選択したつもりだった。ブータンでは、例えば、テキスタイルを見に行くと行って村を訪れると村人達はより現金収入の入る首都ティンプーに移っていて空振りだったりと、かなりいい加減だったからだ。
 しかし今回もこの問題は同じ程度のものがあった。私たちはツアーで旅行をすると、勝手と言えば勝手だが、「私たちの地元のK旅行社もたまには使って下さい。よろしく。」とよくこれまでは言ってきた。,そうした場合に、概ね返事が返ってくるのは、K旅行社は高いという評価。それは、コストパフォーマンスが悪いと言うよりは、つまりは相対的な問題と言うよりは絶対的な高さにあったかとは思う。しかしやはり、今回旅行してみて、相対的な意味でも、高かったと言わざるを得ない。ガイドの能力が低すぎた。ネパール料理を食べたいというと、ダルバートしか思いつかない人だった。ネパール寺院の特徴は?と聞けば、このようなものだと寺を指すだけ。この点を言えば、まだブータンのガイドの方がましだったように思う。
 現地ばかりでは無い。日本でも、現地でも、イミグレーションカードの形式が把握できていない。全く持って不可解だった。
 今回の教訓は、専門だと売り物にしている旅行社でも、案外おざなりなところがあると言うことだ。比較的好天だったことやサイとの遭遇など、楽しめる旅だっただけに、残念だ。旅の印象は良いことよりも悪いことの方が後まで残っていることが多い。ネパールにとって、これは不幸なことだ。

 それはともかくとして、強引に入れたサガルマータ国立公園を含めて世界遺産巡行も287となった。我々の生涯目標は333であるが、その通過点として300を当面の目標にしている。サガルマータの頂はまだ先だが、近いうちに第一ベースキャンプ辺りに到達できることを願っている。