オーストリア世界遺産駆け足旅行

ハプスブルグの栄光の残映を訪ねて

 オーストリアに行こうと決めたのは、あまり深いわけがあってのことではなかった。現在のところ、ヨーロッパの諸国を訪問するのが一つの目標になりつつがあるが、それがオーストリアである必然はあまりない。
 この傾向はここ数年続いているが、ヨーロッパに旅行の力点を置きつつある現状では、なにはともあれハプスブルグの本丸に迫る必然はいつかはあった、というかできるだけ早くそれは実現すべきことではあった。

 日程が合ってしまえば、オーストリア行きを阻害する要素は何もない。

 さて今回も格安旅行者を利用した旅となった。おそらくこれから老境になり、この種の旅行社を利用することが多くなるだろう。今回の人数はそれでも大型バスで、各自が二席確保できる程度の参加者だったので、その意味ではゆったりとした旅ができた。
 ただどうしても表面をなぞるような旅行で、駆け足気味になってしまう。日程の取り方も余裕というものがない。グラーツなど、道が混雑して遅れてしまい、かなりはしょり気味の行程になってしまった。
 とはいえ、今回はたかだか10分だけというようなこともあったが、フリータイムをいくつかの都市では設定してもらえたので、その分はありがたかった。だんだんこうした旅行社も改善の方向にあるのだろう。

 さてハプスブルグ家のオーストリア帝国は一世紀あまりにわたり第一次世界大戦集結まで曲がりなりにも存在した。そのモットーは、「戦争は他家に任せておけ。幸いなオーストリアよ、汝は結婚せよ」というものであったという。政略結婚で次々と実質的な領土支配を広げていったということだ。おかげで、ヨーロッパを旅するとハプスブルグという言葉を聞かずには、旅ができない。

 その一方で、スイスに連なる山岳美の国でもある。湖水地方を含めて、十分とは行かないまでも、その美しさを堪能できた。惜しむらくは、セメリング鉄道が霧の中で終わってしまったことだ。天気のことだから、仕方がないのだけれども。

 今回はロシアと違い、一通例外があったが、絵はがきも無事に届いた。おおむね満足のいく旅行だったおい得る。