ヨーロッパの美しい村々めぐり~城塞都市カルカッソンヌと美しき村々~ 表紙

ボルドーからカルカソンヌへの旅


旅の始まり

 フランスは2009年に一度訪れた。まぁその時はフランスの中を、定食メニューで回ってきた。その時のアクセントとしては、世界遺産モンサンミッシェルの対岸に泊まるという設定だった。おかげで、パリと並びフランス最大の観光地をややゆったり観光することが出来た。夕景、夜景、そして朝の風景とそれぞれを楽しめたし、汐が満ちて孤島の如くなる様も見ることができた。対岸との間を橋で結び、旧来の姿を取り戻そうとする工事の最中だった(今も続いているはず)。
 さて足繁くと言うほどでもないが、ヨーロッパにいくらか多めに旅行をするようになったのはjunが退職しnoriがまだ働いているという状況の頃である。ヨーロッパは春から夏がよい。何故ならこの時期は日が長い。日が長いと、朝の散歩が楽しい。ヨーロッパの特に古くからある中小都市の、観光客がまだあまり動き出さない早朝の散歩は、実に味わいのあるモノだ。
 この「味わい」を、もう少し小さな都市にも広げてみたいと思っていた。しかしながらなかなかそうしたツアーはなかなかない。そうした折しも、普段日本の旅行で大部分をこの旅行社のツアーを使っているC社のパンフレットで、「ヨーロッパの美しい村々めぐり~城塞都市カルカッソンヌと美しき村々~」という名のツアーを見つけた。

旅の時期

 しかしながら、実はnoriの都合で、陽気のよい時期にはあまり出かけられないという、ジレンマも存在した。というのは、地域の老人大学(実際はもう少ししゃれた名前だが)が5月に開講するので、それをなるべく優先しなければならない。実際問題、葵祭の次の日はその開講式なので、葵祭を見たら夜行高速バスで帰ってくる予定だ。そしてその後にも二回ほど休まなければならないので、残念ながら4月にしか予定が入らなかった。それでも春分を過ぎての旅行だから、幾分かは暖かいと考えた。実際には3月末から4月にかけて出かけた。

変わってきていると感じる大手旅行社のツアー

 今回はC社という、ほぼ国内旅行の9割はここでのツアーで旅をしている、そこを使った海外旅行。何回か既に行っているので、まぁまぁ普通の格安ツアーという感じで参加をした。
 この時期は、学校の春休みとも重なるので、けっこう学生がいるのかと思っていたら、まるで老人会の旅行の様であった。我々も(前期?)高齢者だが、最高年齢90にもなる方に至るまで、ほぼ四捨五入すれば60歳という人々が大勢を占める旅行だった。これには、自分たちを外すつもりはないが、いささか驚いた。ツアーリーダを含めて総勢20人の旅だった。
 このたびの最少催行人数は15人。大手で、フランスのような国にい行くのにこの人数設定は少ないと言ってよい。中堅のS社のYさんと言う添乗員氏がかつて「我々は隙間産業ですから」と言っていたが、こうした中堅の会社が得意とする分野に、大手も次第に迫ってきているという感じだ。
 それは今回のツアーの旅行先の設定にも現れている。ボルドーとカルカソンヌを除けば、およそ一般のツアーには登場しそうもないような小都市というか、村々をいくつか巡った旅だった。したがって、参加者全員が概ね旅慣れした人々であり、その雰囲気も中堅旅行社のルアーの雰囲気に似ていた。
 明らかに、大手も、もはや定番旅行地だけでは客をつなぎ止めてはいけないということを感じ始めているなぁと思わせる旅だった。この表現は、質の面でも高くなってきているという意味に理解してもらってもほぼよいと思う。
 今回の旅は「安かろう悪かろう」ではなかったと思う。日程的にもゆったりしており、おおむね自由時間も確保されていて、手作り感が残っていた。
 食事もすべてついているというわけではないのもよかった。個人で選択できる食事の時間が確保されるというのは、金額を抑える意味もあろうが、ある種ゆったり感のバロメーターでもある(個人で食事をする為には相応の時間の確保がいる)。
 添乗員氏も、老人相手に、急がず騒がず、安心感のある添乗だった。勿論我々が何時も口にしている、少し先の旅程の展望に言及もしていたので、行動計画が立てやすかった。
 前回のネパールの何であんな旅になるのがさっぱり見当のつかないめちゃくちゃさと比べるべきではないだろうが、中堅旅行社の大手旅行社との差別化を狙ったツアーと比べても遜色ない。我々としては歓迎する傾向ではある。

中世を感じた旅

 フランス南西部には、保存状態がよい、あるいは修復状態がよい、中世の街並みの面影を色濃く残す村町が点在する。それらの多くは、外観のみを残し、内部は改装が自由になっていることが多いと言うが、電線やアンテナなども含めて細かな都市計画が配慮されていることがうかがえた。我々の訪れた場所の多くが、「フランスの最も美しい村」に属するところであっので、その一定の基準が満たされている場所だった。
 日本でも景観を保全している地域はあるが、ここまでの徹底はない。古民家の外観そのままに、中味は喫茶店などと言うスタイルは日本でも試みがなされていて、それなりに成果を上げているが、そこで映画を今すぐ撮れるほどに徹底しているわけではない(映画は電線などコンピュータ処理が可能だが)。
 この違いは木造造り中心の我が国とヨーロッパの石造り煉瓦造りという構造上の違いも大きいだろう。せいぜい3階建ての人口密度が高い日本では、都市計画において高度の要求が高いだろう(街並みを保全すれば、鉄筋の高い建物は建てられない)。ただそれだけでは説明がつかない気もする。単に商業的なベースの面だけでなく、ハートの問題の違いがあるようにも感じた。
 ただ一点残念だったというか誤算だったのは、ヨーロッパの夏時間だ。もうこの時期に夏時間を採用している。おまけにフランス南西部はパリよりも西にある。夜はなかなか訪れない。その分朝はなかなかこの時期は明けてこない。朝一番のまち巡りには不適切な時期であった。

世界遺産

 フランスは世界遺産とは関係の深い国だ。ユネスコの本部があることもそうであるが、これまでに9回の世界遺産委員会が開かれている。そして何より有数の世界遺産サイト数を誇る国でもある。スペイン・イタリア・中国などと同様に、とても一回で世界遺産を回れる国ではない。
 と言うわけで、勿論我々は今回も世界遺産狙いに行ったことは確かだ。本物のラスコーには研究者でもなければ行けないので、ラスコー2を見学したが、我々のルール3「内部が公開されていない、あるいは入場するには特別の(入場券を買えば入れる程度はない)許可がいるような場合には、その外観等を見ただけで行ったものとする。」に則って、世界遺産一つゲットとさせていただいた。
 それはともかく、今回はフランスの世界遺産のうち、5つを追加できた。これで292になった。当面の目標の300にまた少し近づいた。